政府は16日、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されている10都道府県のうち、沖縄県を除く9都道府県は今月20日で解除する方針を固めた。東京や大阪など7都道府県は、7月11日を期限とするまん延防止等重点措置に移行する。酒類の提供を伴う飲食店に要請されていた規制も緩和され、午後7時までの提供を認める方針だが、専門家は「むしろ営業時間を延長すべき」と指摘した――。
緊急事態宣言の解除に伴い、東京、北海道、大阪、京都、愛知、兵庫、福岡の7都道府県はまん延防止等重点措置に移行する方針。岡山と広島は完全解除となる。「まん防」適用中の埼玉、千葉、神奈川の3県は7月11日まで延長する一方、岐阜と三重については20日で解除する方針だ。
医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏は、「緊急事態宣言の意義自体が薄れてきていて、感染拡大期のまん防も効果も薄く、立ち位置がよく分からない存在。切り替えてもあまり影響はないだろう」と指摘する。
インド型変異株(デルタ株)による第5波も予測されているが、古本氏は「ゼロコロナはありえないし、必ず波が来るのを前提に置いておかないといけない。東京五輪がその引き金を引くのは間違いないし、“日本株”が発生し、批判を浴びる可能性もある。その時の言い訳のつもりで、まん防をやったのか?」と続ける。
一方、まん防に移行することで、休業要請されていた酒類の提供を伴う飲食店への規制も緩和される。一定の条件を満たせば、午後7時まで酒類の提供が認められる方向だ。
古本氏は酒類の提供について「出していいと思いますし、人を分散したいのなら時短ではなく、むしろ営業時間を延長すべき」と指摘する。
「“お酒=感染者を増やす”みたいなイメージになっているが、そうではない。規制がかかっているところは感染症対策もしっかりしているし、客もマスクをする、消毒する、大声を出さないといった予防線が、行政からいちいち言われなくても根付いている」
緊急事態宣言が出ている都道府県の住民が、酒を求めて隣県などに足を延ばすケースもあるが、「他の地域に行って感染が拡大したというハッキリとしたデータはないし、居酒屋でクラスターが発生したという話はあまり聞かない。必ずしも人流=感染拡大ではないんですよ」。
コロナの感染経路において、最近は家庭内や職場での感染が増えているという。
「クラスターが発生するのは、決まった人が決まったように動く施設内であって、不特定多数の居酒屋ではない。それなのにずっと飲食店をターゲットにして圧力を加えているのが変わっていない」
長引くコロナ禍は、失業や倒産などの社会的な問題も生んだ。
古本氏は「企業や飲食店を守りながら、一般市民の生活レベルをこれまでの標準的なものに戻す。経済的損失を防ぎながら感染者の数じゃなく、重症者や死者を減らす対策にスライドしていかないといけない。市民はこれ以上ないくらい我慢してきた。行政はこれまでと違う対策と補償を打ち出すべき」と力説した。
かねて、コロナ禍を“行政災害だ”と主張してきた古本氏は「いつまでも同じ波の繰り返しではなく、分析すべき実例はいくらでもあったはず。ポストコロナのきっかけにすべきなのに生かすつもりがないのであれば、能力の限界。一般市民にとって喜ばしくないことだ」と嘆いた。
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クラスター元凶は「居酒屋ではない!」 10都道府県で宣言解除で酒類提供緩和
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