東京、大阪を中心にたこ焼き店「元祖どないや」などを展開する「アドジックス」(本社・大阪市)の男性社長(42)が、違法な賭博をするスロット店に通っていた。複数の同社関係者が毎日新聞の取材に証言した。社長は開店前から店の前に社員を並ばせて自分が遊びたい台を確保させたり、自分の代わりに台を打たせたりもしたという。
風俗営業法などに違反するスロット店は「裏スロ」や「闇スロ」と呼ばれ、過去には客側が賭博容疑で逮捕された例もある。
社長運転手や店舗管理などを担当した元社員の30代男性らによると、社長が常連だったのは東京都内の複数の裏スロ店。看板はなく、紹介された客だけが入れる会員制で夜から朝にかけて営業していた。本来は設置できないギャンブル性の高い台などがあり、社長は日によっては数十万円単位で勝ったり負けたりしていたという。
男性は日中の仕事を終えた後、夜の開店2時間以上前から台を取るために並ばされたこともあった。社長とやりとりした無料通信アプリのLINE(ライン)には「なんのために早くならばしたかわからんやろ」「絶対ダッシュでぬかれるなよ」と好みの台を取らされた記録が残る。社長が店に間に合わない時や帰宅した時などには、当たりの出そうな台を代わりにやらされたという。
男性は社長の家族の日常的な送迎や家族サービスの同行もさせられたと訴える。東京ディズニーランドでは1時間以上待つ必要がある人気アトラクションに並ばされ、入場が近くなったら呼ぶように命じられた。短い待ち時間で楽しめる優先チケット「ファストパス」にかけて、社長から「人間ファストパス」と呼ばれたという。
男性は社長と会社に、未払い残業代や慰謝料などを求めて東京地裁に提訴した。社長側は「スロット店に行ったことがあることは認める」との内容を裁判所に提出し、訴訟を担当する弁護士が法廷で「違法な店か適法な店かは分からなかった」と説明した。人間ファストパスを含む家族サービスの同行には「(男性とは)家族ぐるみの友人関係にあり命令や強要はありえない」と主張した。
毎日新聞がこれらの内容を示して同社側に見解を求めたところ、同社代理人を務める別の弁護士が「指摘の行為は業務と無関係で、社長の個人的行為にはコメントいたしかねる」と書面で回答。裁判についても「徹底的に争っている」などとしている。
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