接待を伴う飲食店4店舗で新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が発生した東京都足立区竹の塚1丁目地区。
区の関係者によると、この地区では100人以上の感染が確認されている。フィリピンパブが軒を連ね、「リトル・マニラ」とも称される同地区で、なぜ感染が拡大したのか。(大前勇)
同地区では、7月20日にフィリピンパブ2店舗でクラスターが確認され、その後、別の2店舗でもクラスターの発生が確認された。区の関係者によると、ほかにも感染者が出た飲食店があり、従業員の家族も含めると感染者は100人を超えるという。
全国で新型コロナの感染が拡大した3月以降に、クラスターが発生した複数の店舗を訪れたという区内の40歳代男性によると、マスクの着用や手の消毒、ドアを開けての換気といった対策は実施していたという。ただ、フィリピンパブでは女性と会話をしたり、一緒にカラオケをしたりするだけではなく、ハグやキスをすることもあるといい、「客と従業員の距離がそもそも近く、感染が広がる下地はあった」と語る。
フィリピン人従業員の交流も、感染を拡大させた可能性があるとみられる。足立保健所によると、7月にクラスターが発生した店舗も含めた複数のパブの従業員が参加するパーティーがあり、参加者から感染者が出たという。
同地区は、埼玉県南部をはじめ、都外から訪れる人も多い。そのため、区は店名を公開して検査を呼びかけた。その結果、来店客計10人の感染が判明している。
一方、区は8月上旬に計4日間、感染者や濃厚接触者ではない従業員を対象に検査を実施。220人が検査を受け、陽性者は1人だけだった。足立保健所の寺西新所長は「感染状況を早めに把握することで、繁華街内でのおおよその感染の広がりをつかむことができた」と一定の手応えを感じている。
ただ、調査に応じる店舗ばかりではない。区の担当者によると、客や従業員を明かさない店舗も多いという。そもそも無許可で営業する店舗もあり、店の数を正確に把握することすら困難なのが実情だ。
竹の塚飲食店組合の関谷宗明組合長(70)によると、同地区周辺の飲食店は客足が遠のき、一時は客が半分ほどになった店もあるという。「竹の塚が悪い意味で有名になってしまった」。関谷組合長はため息交じりに話した。
都人口統計課によると、足立区には7月1日時点で3704人のフィリピン国籍の住民がいて、都内の自治体で最多となっている。
在日フィリピン人の置かれた状況に詳しい静岡県立大の高畑幸教授(社会学)は、竹の塚地区のクラスター発生について、「フィリピンパブでの感染を機に、フィリピン人全体への差別につながらないかと懸念する。感染予防徹底に加え、介護職など安定就労が見込める昼の仕事への転職支援も必要ではないか」と指摘している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200902-OYT1T50090/
フィリピンパブでクラスター、なぜ?…「リトル・マニラ」で感染拡大
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